8月26日の伊勢新聞の記事に津市議会の図書室が閉鎖されたと掲載された。
情報源:津市議の控室が不足 分煙希望で図書室間借り | 伊勢新聞
詳細は元記事をご覧頂きたい。
一人会派という言葉自体に違和感を感じるがそれはこの際置く。
一人の議員のために個室を用意したのは健康増進法の規定に配慮したのだろうか。では、健康増進法をおさらいしてみよう。第25条に公共の場の受動喫煙防止として以下のように定められている。
学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。
この定めによれば、努力義務ではあるが施設管理者は受動喫煙を防止のための必要な措置を講じなければならない。
ただ、すぐさま疑問が浮かび上がる。
他の会派はどうしていたのか
今回の件は1人会派が2つ入っているところで起きたことである。当然、会派は他にもあるのだが、喫煙者とそうでない者がいるはずである。
確か、会派控室と同じ階の議員応接コーナーに喫煙場所があった。健康増進法の施行とともに設置されたはずだが、今はないのだろうか。※執筆時点では確認できていない
他の会派ではおそらく喫煙場所で喫煙していると思われるのだが、議員用の喫煙室を用意するならまだしも、1人会派だけ喫煙を目的として個室をあてがうのは措置として公平なのだろうか。
図書室設置は地方自治法上の義務
そもそもの問題として、閉鎖された図書室は実は地方自治法で設置が義務付けられているものだ。
地方自治法第100条第19項は以下のとおりである。
19 議会は、議員の調査研究に資するため、図書室を附置し前二項の規定により送付を受けた官報、公報及び刊行物を保管して置かなければならない。
この規定でゆけば、図書室がないのは完全にアウトである。
とすれば、議会事務局の回答は記事のとおりならまちがいで、正解は「図書室は移設するが、移設先は未定」である。
一般利用者はどうするのか
また、前項に続き地方自治法第100条第20項に以下の規定がある。
20 前項の図書室は、一般にこれを利用させることができる。
実際、利用者がそれほど多いとも思えないが、市民の知る権利を担保するために一般利用を可としている市議会が多い。
このため、市民が来てもアクセスしやすいように応接スペースの隣、一番アクセスしやすい部屋に設置されていた。
仮に図書室を別の場所に移設したとしても、部屋不足で図書室を潰すくらいだから今より利用しやすい場所になるとは考えにくい。
この措置は、日頃から市議会で拘っている「県都としての風格」に沿うものなのだろうか。
この問題で透けて見えるものは
一人ひとりに欲しいものがすべて与えられるなら問題の解決は簡単だが、現実にはありえない。資源は限られているのであり、部屋が足りないからといって簡単に建物を建て替える訳にはいかないのだ。
では、どのように融通しあって使っていくのか。それはまさに話し合い、議論して合意点に達する、議会の構成員たる議員の本分とするところではなかったか。
では今回の件では、控室を使用する議員で十分な話し合いが行われて決めたことなのだろうか。見る限りにおいては、安易に「図書室を潰す」という結論を出してしまったように思える。
危惧するのは、議会の運営そのものが「個室化」してしまっているのではないか、ということである。
議論をして合意点を見出すというのは確かに手間も時間もかかることである。しかし、その労力を避けるためにルール抵触することや市民の権利を制限する方向に向かうことは本末転倒である。故意にしろ過失にしろ安易に道を選ぶことに市議会の未来を案じてしまうのである。
市民は心してこれからの市議会の動向に注目するべきである。
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